西田 久美子 代表（手しごとアトリエ・雑貨 kotricot（コトリコ）)のインタビュー

手しごとに生かされた経験を多くの人に

初めは母の介護の最中でした。ふと「編み物やってみよう」と思い立ち、キットを注文して編みぐるみを編んだんです。次は子育て中、手芸好きなお友達とどちらが誘うでもなく集まるようになりました。不安で孤独な日々を過ごしていた当時の私にとって、手しごとをしてみんなで集まって過ごす時間は、何よりの救いの時間だったのです。その後、編み物教室・学校に通い始め、徐々に編み物にのめり込んでいったんですね。
いつかお店をやりたい、とは思っていました。でもそれが手芸とも思っていなかったですし、もっと年を取ってからでもいいと思っていたんです。それが1年半前のことになりますか、この建物の2階で友人がハンドトリートメントのお店を出した時に、たまたま遊びに出かけました。そこで「ここが空いてるよ」と。初めは躊躇したんです。その前は倉庫に使われていたらしく、なかなか大変なことになっていて（笑）。でも、使えるものは生かして、家族や友人に手伝ってもらい、できたのがこちらのお店です。

手しごとを楽しんでいただける時間を提供するお店

「手しごとアトリエ」となっていますように、編み物に限らず、刺し子やパンチングニードルなど、手を動かして楽しんでいただける時間を提供するお店です。店内には作業をするテーブルを囲むように手しごとにまつわる様々な商品が並んでいます。大きな手芸屋さんに比べれば品数は限られていますけども、厳選した海外の糸をはじめ、この近くではなかなか見かけないものをセレクトしておいてあります。雑貨も充実しています。私が猫好きということもあって、猫雑貨もさりげなく置いてあって（笑）、猫好きな方がプレゼントとしてわざわざ買いに来てくださるんですよ。

編み部と手芸部。手芸部と編み部。お好きなように楽しんで

編み部と手芸部とがあり、手芸部は編み物などの手しごとをお持ちいただき、テーブルを囲んでお茶を飲みながら、それぞれのペースで仕事に取り組んでいく時間です。共通の趣味の話をしたり、ただ喋ったり、日常と離れた時間をゆったり過ごしていただければと思います。それから、編み部について。こちらは、手芸部にレッスンが付いたものと解釈ください。手芸がまったく初めてという方は、別の日にマンツーマンでお教えします。初めての方にはどうしてもつきっきりになってしまうので、他の方が進まなくなってしまうんですね。以前、お客様とお話をしていて、編み物教室だと待ち時間が長く、聞きたいことも聞けず、不完全燃焼で終わってしまった、ということがよくそうで。そうしたことがなくなるよう、一定のラインまでお教えし、それからみんなで一緒に取り組んでいきます。今は動画もありますけども、「見てもわからない」という方もいらっしゃるんですね。また、目標のものがあれば、「先にこっちを練習したほうがいいですよ」といったように、直接お会いして話していくことで、選択肢が広がっていくメリットもあります。
ある程度できるようになると、みなさん、どんどん進んで行かれるようになります。普段は手芸部でお茶を飲みながら編まれていて、教えてもらいたいことができたら編み部を予約して、レッスンを受けるという形で使い分けている方もいらっしゃいますよ。

ここにいる時間そのものが楽しみであり、目的に

編み物をすることで心が安定して、あまりイライラすることもなくなって旦那さんが喜んでる、という方がいらっしゃったり（笑）、介護の合間にここに来るのを楽しみにしてる、という方もおられます。

初めて来店される方で、結構スイスイと編まれていかれるので、「ずっとされてきたんですねえ」と聞くと、30年ぶりなの、20年ぶりなの、という方が珍しくありません。やっぱり自宅ではご家族がいらっしゃって、何かと用もあって、編み物に集中するっていうことが難しいそうなんですね。日常とは違う空間に来ることで手しごとに集中できるし、この時間そのものが楽しみであり、目的になっておられるんだと思います。
時代も変わりました。以前はテクニック重視で、「どう、すごいでしょ」っていうものが多かった気がするんですが、今はシンプルなデザインだけどシルエットがすごくいいですとか、素材も色も様々なものがあって、本当にステキなものがいっぱいあります。私自身、次々と編みたいものが出てきて、本当に楽しいんです。

地域のみなさんへメッセージ

私が子育ての期間中に助けられたように、妊婦さんや、小さなお子さんのいる方を対象とした会も開いていきたいですね。お子さんの話だけでも楽しいんですけど、ここで違うお話、違う人に触れることで、リフレッシュできることもあると思うんです。ここがもう1つのあなたの居場所になれば、こんなに嬉しいことはないと思っています。手しごとを通して、人と人が出会い、つながっていく場所を目指していきます。まずは気軽にお問い合わせください。

※上記記事は2024年5月に取材したものです。
時間の経過による変化があることをご了承ください。