坂東 以津緒 先生(坂東流日本舞踊教室(横浜))のインタビュー

坂東流日本舞踊教室(横浜) 坂東 以津緒 先生

坂東流日本舞踊教室(横浜) 坂東 以津緒 先生 ITSUO BANDO

2才より母である坂東三津以に手ほどきを受け、15才で坂東流師範を許され古典を中心に勉強し舞踊の道を志す。平成5年より坂東勝友先生に師事。平成7年8年と日本舞踊社主催「みそみ会」で「年増」「まかしょ」にて入賞。平成8年より(社)日本舞踊協会主催の新春舞踊大会にて「供奴」「玉屋」で奨励賞、「源太」「年増」「流星」で大会賞、平成13年度特別賞文部科学大臣奨励賞をもって卒業し現在にいたる。古典舞踊をライフワークとしているが、同時に創作研究グループにも所属し作品づくりにかかわり、振付も手がける。

自然と母の背中を見よう見まねで追って過ごしてきた稽古場

小さな頃から自然に稽古場で遊ぶように育ってきて、母の背中を追って、見よう見まねでやってきました。私から「お稽古してください」と言わない限り、母はお稽古してくれず「見て覚えなさい」というスタンスで踊れなければ怒るという厳しい指導でした。幼児の頃から親に連れられ、歌舞伎鑑賞はしていましたが、小学5年生のある日に見た歌舞伎が鮮烈に面白いと思って、大好きになったことをはっきり覚えていますね。そこからは、自ら「歌舞伎に連れて行って、連れて行って」とお願いするようになっていました。大学生になると毎月歌舞伎座へ行っていましたが、休講があるときも一幕見に行っていましたね。その方が喫茶店に行くよりもずっと面白かったですね。

フレデリックの生き方が大好き

レオ・レオニの「フレデリック」のお話はご存知ですか?私はフレデリックが大好きなんです。ねずみの仲間たちが冬に備えて春夏秋と働いている間、フレデリックはお仕事をしていないんです。ふと仲間たちが「一体フレデリックは何をやっているのだろう?」と思ったら、春夏秋の「いろ」「ひかり」「ことば」を集めているんですね。そして冬を迎え、食べ物がなくなってきて寒さで凍えそうな時に、フレデリックがたくさんの暖かい言葉を伝えて、仲間の気持ちが満たされていくというお話です。青臭いようだけど、私はそんなフレデリックを目指しています。災害時は特に考えさせられますが、舞踊は具体的な力にはならないかもしれないけれど、やはり様々な催しをしてみなさんに喜んでいただけたらと思うんですね。実は好きが高じてフレデリックのお話の舞踊を創作もしているんです!教室の入口などにも、フレデリックのイラストがところどころにあるでしょう(笑)

舞踊を通じて自国の文化を知り、一歩踏み出すきっかけに

日本の義務教育には、自国の文化を学ぶ授業がないんですよ。海外に一度行って帰ってきた人は、そういう点で「自分の国のことをあまり知らなかった。自国の文化を説明できなくて恥をかいた」というエピソードはよく聞きますよね。逆に海外の人の方が日本のことをよく知っていたりして。「踊りがとても上手いことが将来に役に立つの?」と聞かれたら、日本舞踊には目に見えて役に立つことはないかもしれません。礼儀作法といっても今と昔では住宅事情は違いますしね。だけど、ここで習ったことが自分の生活に溶け込んで「自国の文化に総合的に興味を持って一歩踏み出す」ということが大事だと思うんです。だから、私は若い方からの色々な質問にも答えるようにしています。こちらで、私の知らないところでも、みなさんで情報交換がされていて、プラスアルファ学びたいことや機会が生まれるようなコミュニティになったらいいなと思うんですね。そういうこともあってか、一般的には日本舞踊は高齢化していると言われていますが、こちらに通われているお弟子さんたちは、幼児から10代〜70代までコンスタントにいるんですよ。

個人のお稽古なので個々の興味の芽生えをそっと見計らう

お子さんの場合、着物が自分で着られても何にも偉くないって私は話すこともあります(笑)子どもが何歳になったらこれができるようになる、という目安はあまり意味がないです。それよりも、着られない時に「着付けをお願いします」と周りにいる大人に自分から声をあげることが大事なこともありますよね。繰り返し着付けしてもらっているうちに自然に覚えられるし、自分の興味がどこでどう芽生えるのか、というのは本当に個人差がありますから強制することはありません。それが1対1の稽古のメリットじゃないでしょうか。ただ「踊りだけ学べばいい」「踊りが体に良さそう」という目的だけでは続かないですよ、とはじめにお伝えしています。というのも、何かを習得するというのは、そういった着物の着付け、歴史を知ることなど総合的に興味を持って理解を深めていくこと大事です。特に社会人になって、自分の経済・意思で遠方から来られている方は長く続きますね。そんなお勤めの方もおられるので、最終は21時までにお稽古場に入ればいいですよ、とお伝えしているんです。仕事が終わってすぐに帰宅したいだろうと思うのに、自宅とは反対方面のこちらまで通われて。むしろ「こちらで頭をフラットにして学ぶことで、疲れが取れ次の日の活力になる」と話されていますね。

総合的に学びフラットに付き合えるコミュニティ・見学はお気軽に

今までは私が中心になってやってきていましたが、ご縁に恵まれ、私の意図をくみ取って自発的に動いてくださる方が増えてきて、いい感じにコミュニティが育ってきました。私も年齢的に、自分で動くところと、人に委ねるところの必要性の両面から考えることが大事になってきていますね。こちらでは学生さんから、社会人、グローバルにご活躍されているアーティストなど様々な肩書きの方がいらっしゃって本当に個性豊かなんです。でもこちらに来られたら、みんなお弟子さんなので自然とフラットなお付き合いになりますね。学生さんが学位を取るのに、翻訳家さんに論文の相談されていたり、お弟子さん同士の交流も見られて嬉しいです。もちろん日本舞踊を習いにきているのだから、踊りが上達して欲しいとは思いますが、振りだけではなく「もっと日本の文化を知りたい」と思えるような総合的な空間になるように、これからも活動していきます。地域のふれ合いのイベントなどでは子どもたちを連れて踊りを披露しています。見学をご希望の際に、ドレスコードをよく聞かれるのですが、着物でないといけないことは決してありません(笑)少しでも興味を持たれたら、気負わず見学へお越しください。

 

※上記記事は2023年8月に取材したものです。
時間の経過による変化があることをご了承ください。

坂東流日本舞踊教室(横浜) 坂東 以津緒 先生

坂東流日本舞踊教室(横浜)坂東 以津緒 先生 ITSUO BANDO

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  • 出身地: 神奈川県横浜市
  • 趣味: 俳句(ほんの少し)
  • 好きな本・愛読書: 日本の歴史や文化に関する本、絵本「フレデリック」(レオ・レオニ著)
  • 好きな音楽: 長唄、清元、江戸浄瑠璃
  • 好きな場所: 芝居の空間

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