高梨 康平 オーナー・職人(小鳥遊商店)のインタビュー

小鳥遊商店 高梨 康平 オーナー・職人

小鳥遊商店 高梨 康平 オーナー・職人 KOHEI TAKANASHI

専門学校でグラフィックデザインを学ぶ。卒業後、洋服店で販売の経験を積んでいる中、靴修理店に出会い感銘を受け、数々の修理店で修行経験を積む。2021年「小鳥遊商店」を開業、2023年10月で2周年を迎えた。(京浜急行電鉄本線「戸部駅」徒歩10分、相鉄線「西横浜駅」徒歩13分、相鉄線「平沼橋駅」15分)

洋服販売を経験後、自分にしかできない仕事をやりたいと修理店で修行

グラフィックデザインを学ぶため専門学校に進学し卒業するのですが、元々趣味が多く、学校が終わってからよく通っていた洋服屋で働き始めたのが最初の就職でした。それから、いくつかアパレル業界で仕事をしていく中で、すでに完成された量産品の販売ではなく、自分にしかできないこと、他に代わりがきかないことを仕事にしたいと思い始めました。その時に、たまたま愛用していた革靴の底に穴が空き、初めて靴修理屋というものを利用することに。その時までは、靴修理屋は見かけたことはあっても全く興味がなかったのですが、その地元にあった小さな修理屋は打合せのやり取り、店内奥で作業している姿やお店の雰囲気も含めてとても良い印象が残りました。その後、未経験でもOKという靴やバッグ、洋服の修理をしているお店の求人を見つけ、修行をすることにしました。「とにかく実際に手を動かしてどんどんチャレンジしてみよう、数もこなさずにうまくなんてならないよ」というような割とスパルタな指導で、様々な修理の経験をさせていただきました。今思うと、はじめの修行先がそこであったことは本当に恵まれていたと思います。たくさん数をこなす中で、悔しい思いをすることもありましたが、何となく「この仕事は自分に向いているな」と最初の方から感じていました。そこで洋服、バッグ、靴など色々修理をする中で、自分が一番得意なのは靴修理ではないかと思い、修行先を靴修理と靴磨きの専門店へ移ります。

いつかは自分のお店を持ちたいと思い描いていたことが現実に

そこでは高級靴の修理の依頼が多かったことがとても勉強になりました。修理を通し、ブランド名だけではなく、革の種類や靴の構造の良さなどを学べたのは良い環境だったと思います。もっと知らなきゃいけないことがいっぱいあると改めて思い、ここでも3年ほど経験を積んだ後に、また違うお店で経験を積めば新しい知識やスキルを吸収できるのではないかと向上心が芽生え、様々な店を転々と移りながら経験を積んできました。修行を始めた当初から、自分の店をやれたらいいなという理想を持っていて、そのイメージにグッと近づくことになったのが6年前くらいでした。靴修理に専念した後に、また考えが変わり、靴に限らず革製品全般、色々修理できる方がいいと思ったのです。そのタイミングで、ちょうど勤めていた店舗の師匠、兼、オーナーさんが「お店を撤廃しようかと思うのだけど、もしやりたかったらお店を継がない?」というお話をくださいました。そこで初めて半分独立というような形でフランチャイズオーナーとしてお店に立つことになりました。コロナ禍でそのお店は閉店しましたが、今度は完全に独立した形で自分のお店を始めたいと思い、今のビルを見つけて開業を決意しました。

ボロボロのビルを修繕、生まれ変わった空間で洋服の販売もスタート

元々、このビルは壁などがボロボロで朽ち果てていました。でも、なんとなくお洒落な店内にできそうだな、という予感があって、業者さんに壁を綺麗にしてもらい、床は自分で貼り、お気に入りの照明を置くなど手を加えていくうちに自分の出したかった雰囲気、世界観をうまく表現できた店内に仕上がりました。直すものがなければ来店してもらえないというのも寂しいと思い、洋服の販売もするようになりました。元々服好きで、販売員時代に得た知識もありましたので、古着を独自に仕入れて、綻んだ箇所などは自分でメンテナンスをして販売しています。

自分もファッションにこだわりを持って修理販売・お店の説得力にも

自分がメインでやっている靴やバッグの修理や、洋服のリメイクにしても、全部ファッションアイテムなので、まず僕自身がファッションにこだわりがないとダメだな、と思っています。自分がお客様だったとしても、自分のお気に入りの靴やバッグを修理に出す時に、お店の人が大事にしている物や服への思い入れやこだわりが分かってもらえるかな?と気になると思います。なので修理することと自分が仕入れた洋服や雑貨を販売することは違うようで繋がっていますし、お店の説得力にもなると思っています。

少しでも可能性があるなら引き受ける!修理するものがなくても気軽にお話だけでも

効率性を重視する修理店ですと、難しい修理だと断るお店があるのも実情です。うちは一人でやっている個人店なので、少しでも可能性があるならばそれにかけて引き受けたいと思ってやってきました。どういうきっかけであれ、お客様が何か希望を持って、うちに来てくださったのだから力になりたいと思っています。100人いたら100人を大満足させることは難しいかもしれませんが、断ってしまったらそれまでですし、やってみればなんとかなることも沢山あります。完成形をイメージできることは大体形になりますね。他では出来ないと断られてしまってうちに来てくださる方も多いです。この辺りは商店街のメインロードではないし、裏通りで静かな地域で、それでも来てくださる方へできるだけお断りせず想いにお応えしたいです。修理の仕事は1点、1点、すべて違って学びになるので本当に終わりがないですね。最初は勇気を振り絞って入ってみたとか、入りづらいと言われることがありますが、服や靴が好きでないと来てはいけないなんてことはないですし、興味を持っていただくのも自分の役割とも思っています。服や靴に興味がなかった方がうちに来てくれたことをきっかけに、すごく興味を持ってくださるようになることもあります。お店を偶然通りかかった方も、インターネットで検索して知った方でも、その時に修理するものがなくても、どなたさまもお気軽にふらっと立ち寄ってくだされば嬉しいです。

 

※上記記事は2023年12月に取材したものです。
時間の経過による変化があることをご了承ください。

小鳥遊商店 高梨 康平 オーナー・職人

小鳥遊商店高梨 康平 オーナー・職人 KOHEI TAKANASHI

小鳥遊商店 高梨 康平 オーナー・職人 KOHEI TAKANASHI

  • 出身地: 東京都
  • 趣味: 食べることが好きで美味しいお店の発掘、食べ歩き、古着屋さん巡り
  • 好きな映画: あまり観ないのですが、最近だと「騙し絵の牙」が面白かったです。
  • 好きな音楽: 洋楽邦楽問わずロックが好き・基本的にロックを中心にオールジャンル聞くが店内ではジャズを流すことが多い。
  • 好きな本: 雑誌「POPEYE」、レトロな喫茶店が好きで特集されている本や雑誌は買うことが多いです。
  • 好きな場所: 鎌倉

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