永田 賢一郎 代表・建築家(藤棚デパートメント)のインタビュー

藤棚デパートメント 永田 賢一郎 代表・建築家

藤棚デパートメント 永田 賢一郎 代表・建築家 KENICHIRO NAGATA

横浜国立大学大学院/建築都市スクールY-GSA修了、2018年YONG architecture studio設立。自身の設計事務所と地域のコミュニティスペースとして2018年5月「藤棚デパートメント」開業。2021年横浜国立大学都市イノベーション学府・研究院 非常勤職員就任。シェアスタジオ野毛山Kiez代表、南太田ブランチのオーナーでもある。

学生時代に過ごし、運営した「ヨコハマアパートメント」が原点に

大学院生の時から「ヨコハマアパートメント」で暮らし始め、入居者でありながら運営にも携わっていました。オーナーの川口さんには学生時代から大変お世話になりましたね。「ヨコハマアパートメント」を通して、地域の方とコミニュケーションを深めた経験が今の活動の原点となっています。川口さんをとおして地域の方とも繋がっていき、そこで繋がった皆さんに本当によくしていただいてきました。私は東京出身で、東京で暮らしてたのは20歳くらいまでですが、私立の中高に電車で通うようになると、電車で出かけることが増えて地元で過ごすことが少なくなりました。だからこそ、地域に根付いた活動や交流に魅力を感じたのかもしれません。建築家の仕事をするにあたり、学生時代を過ごした藤棚商店街で自分の設計事務所を構えようと考え、また、そこは自分たちだけが使うだけではなくて、レンタルスペースとしても機能させて地域の方にも開かれた場所にすることにしました。そこで、4分の1は事務所として、残りの4分の3はレンタルスペースとし、そのレンタルスペースは、日替わりカフェや料理教室が開けるシェアキッチンと設計事務所、書店を兼ねた地域のコミュニティスペースとしてゆっくり育ってきたように思います。

商店街の雰囲気の延長のような空間づくりの仕掛け

キッチンと事務所は奥に配置し、商店街に面した手前側は、床にサインだけを記し、商店街の延長のような空間を作りました。商店街の雰囲気を中に引っ張ってきているんです。はじめの頃は、おばあちゃんがなんとなくふらっと入られてここのベンチで休まれていたり、談笑している風景も見られました。お散歩中のワンちゃんがなんとなく何かを期待してここで止まっていたりするのも可愛くて(笑)。毎月・月末に妻がガラスに手書きしてくれているこのカレンダーも、結構皆さん、足をとめて見てくださっています。「うちも真似させてください」と他のお店の方も結構取り入れられているみたいですね(笑)。初見で入りにくいお店も、こうしたカレンダーの情報があると「ここで足をとめて、見ています」と皆さんがここに立ち止まる言い訳ができるので、実は、コミニュケーションツールでもあるんです。建築的な提案やデザインの力をあちこちに仕掛け的に使っています。使っていくうちにレイアウトが変わっていくことも、ここを使っている人たちの知識の蓄積が可視化されるのもまたいいなと思います。

管理人の手から離れて地域の人で回っていくことが理想的

ここを利用される方同士で、コラボワークショップが生まれるなど、どんどん賑やかになってきています。一人ではできないことも、他の方と一緒にすることで互いの集客につながることもあるみたいで素敵ですよね。これは予想外でしたが、皆さんで自発的にそういうことが自然に生まれていることが、とても嬉しいです。商店街で事務所を構えていると、どの時間帯に人の流れがあって、どの時間帯は少なくなる、ということも体感でわかってきます。初めて利用される方には「イベントやるならこの曜日がいいですよ」と商店街の特性と合わせてお伝えしています。レンタルスペースを利用し慣れてきた方は、私がいなくても「ここはこういう場所ですよ」と説明できるようになってくるのでお任せできるのもまた嬉しいことで。管理人の自分の手から離れて、このスペースがさらに活かされて、皆さんで回っていくようになっていくのが一番理想的だと思います。

生活圏の豊かさを大事に・暮らしている人の目線で豊かさを創っていけるように

商店街も空き店舗が増える商店街の中で、自分の店1店舗だけ売上が良くても本当の意味での街おこしにならないですよね。「藤棚デパートメント」が、商店街をより知ってもらうきっかけになって、暮らしている人の目線で豊かさを創っていける一助になればと思っています。そういえば、コロナ禍でも藤棚商店街は賑わっていたんですよ。皆さん、横浜駅とか大きな駅へあまり行かなくなって、この辺りでお散歩やお買い物を楽しまれている姿をよく見かけました。あちこちでテイクアウトのものが売られていたりして。生活圏の豊かさを改めて再認識できた時期だったと思います。やはり自分の暮らしの延長の中で、新しい試みが生まれ、人のご縁が生まれ、近くの人を巻き込んでいくのがいいなと。

住んでいる人が自分の地域を愛して育てていこうという気持ちの先にある活動

仕事で街づくりの相談を受けることや関わることもありますが、自分が住んでいないとあまり思い入れって出来にくくて。やはり住んでいる人が自分の地域を愛して、育てていこうという意識の先にこういう活動があった方がいいなと思うんです。暮らす上で住んでいる地域というのは皆さんあると思いますが、そもそも役場や誰かに頼まれてそこに住んでいるわけではないと思いますし、「住んでいるのは自分たち、よくするのも自分たち」という主体的な気持ちで地域に関われたら、より楽しい暮らしになるんじゃないかな、と思います。ここもぜひ「週末だけお店をやってみたい」「自分の得意なコトを教えたい」など、皆さんの何か「やりたい!やってみたい!」を実践する場所としてお気軽にご活用いただければ嬉しいです。空いているときはどうぞ立ち寄ってください。

 

※上記記事は2024年4月に取材したものです。
時間の経過による変化があることをご了承ください。

藤棚デパートメント 永田 賢一郎 代表・建築家

藤棚デパートメント永田 賢一郎 代表・建築家 KENICHIRO NAGATA

藤棚デパートメント 永田 賢一郎 代表・建築家 KENICHIRO NAGATA

  • 出身地: 東京都
  • 趣味: 作ることが好き・自主施工もする、ドライブ
  • 好きな映画: クリストファーノーランの作品
  • 好きな本: 建築関連
  • 好きな音楽: オールジャンル
  • 好きな場所: 野毛山

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