松澤 力 オーナー・シェフ（オステリア ダルマーレ)のインタビュー

飲食店を経営していた両親の背中を見て育つ・父と共に市場の仕入れも

元々、父が洋食のコックで居酒屋を30年ほど経営していました。私も時々お店を手伝っていたので、両親が働く姿を身近に感じて育ちました。料理人の道を志したのはその影響が大きいでしょうね。父が市場に魚介の買い付けに行く時にも、一緒に連れて行かれて色々見ていたので、そこで身についたこともあると思います。市場の方も小さい子にはすごく優しくて、いい思い出です。

30代で独立開業すると明確な目標から逆算し修行を積み重ねた

私が料理を修行していた時代は、料理人は10年下積みをしてようやく1人前扱いしてもらえるような感じでしたが、私は最初から30代で独立したいと明確に思い描いていたので、目標から逆算し、なるべく早く料理できる職場を選んできました。最初からイタリアンの道に入った訳ではなく、ドイツ料理レストラン、グリル料理レストランなど様々な店舗で修行を積み重ねました。ようやくこの地域で開業したのは、私の仲間がここで開業していたイタリアンレストランを移転するため、その場所を使うかどうかという提案を受けたことがきっかけです。実家にも近いこともあり、将来的なことも考えてこの場所に決めました。

とどまらず常に学び進化し続ける姿勢・ずっと料理のことを考えている

一人で調理をしていると、どうしても知識や考えが偏ってしまったり、流行などに遅れてしまうので、意識して自ら学び続けることを大事にしています。食材、技術、調理法など、今どういうものが流行っているのか、常に学び、先を読んで、一歩先をつくような料理を作りたいという想いがあります。今はトマトやイチゴでも、すごく甘い品種が出てきたりして、種類が広がってきていますよね。食材はどんどん進化しているので、調理法を変える必要もあります。私はイタリア現地で修行をしたことがないので、自分の思考と経験を磨いて、イタリアの伝統的な料理というよりも、個性を出したいと思ってやってきました。今はいい意味でフレンチ、イタリアン、スペイン料理とボーダレスになってきていますので、様々な手法も学びながら、着地点をイタリアンに落とし込む、といった自由な発想を持つように心かげています。料理は自分のライフワークなので、好きとか嫌いとかそういうことを言うのも気恥ずかしいというか（笑）。でも結局24時間、料理のことを考えていますね。

仕込みから料理まで自分が納得いくものを提供し続けたい

食材も自分が納得できるものを選んでいます。例えば、ジビエは契約している鹿児島のハンターさんから送っていただいていますし、魚介類は中央市場が近いので、自分で買い付けに行っています。もう30年くらいの付き合いのある方にお世話になっています。野菜は横浜産の地場野菜をベースに使っています。そうすると、どうしても原価が上がってしまうので、お料理単価も比例するのですが、やっぱり自分が納得できるものをご提供したくて。わざわざオーナーシェフ店に足を運んでいただくのだから、そこのお店の個性がないと、チェーン店と変わらなくなっちゃいますから。手打ちパスタ麺、生ハムや、パンも酵母から自分で作っています。本当に朝から仕込みのスケジュールを秒単位で考えながらオープンまで動き回っています。とはいっても、30年もやっていれば自然にできることになっていますが（笑）。拘束時間はどうしても長くなるので企業にしてみたら、スーパーブラックですよね！でも、これからの人たちは、自分みたいにがむしゃらに働かなくても（笑）、きっと新しいやり方を見つけていってくれるんだろうと期待しています。

お客様の趣向を汲み取りお出しする喜び

今では評判を聞いて遠方から足を運んでくださるお客様も多いです。月に1、2回、ちょっと美味しいものを食べたい、落ち着いて食事をいただきたいという方がよくご来店してくださっています。素材にこだわっているため、地域の中では高い方だと思いますが、ランチはお安く提供させていただいています。ひとりで調理しているため、お客様とたくさん会話できる訳ではないのですが、なるべくお客様の趣向に沿ったものをお出しし、喜ばれると嬉しいですね。うちの妻も、お客様とコミュニケーションをとりながらヒアリングしてくれていているので助かっています。彼女は味のセンスが鋭く、ワインのチョイスは任せています。飲食店もすぐに閉店してしまう時代に、ありがたいことに、この2024年で14周年を迎えられることになりました。ぜひ当店に足を運んでいただいて、ゆっくりお食事を楽しんでいただけると嬉しいです。

※上記記事は2024年3月に取材したものです。
時間の経過による変化があることをご了承ください。