渡辺 奈津子 代表（合同会社OHANA)のインタビュー

地域の子育ての担い手となる母子支援サービス

私たちは、精神科と小児科の訪問看護を使って地域の子育て支援を行っています。利用されている方のほとんどが発達に特性のあるお子様を育てながら、日々奮闘されている方や、心の調子が不定になりやすい中、心のケアをしながら、子育てに励んでいる方になります。その他、双子などの多胎育児の方も多く利用してくださっています。今の時代、出産年齢が高齢化したこと、核家族化で昔と違ってなかなか育児支援が得にくいという現状があります。そういったところを地域の子育ての担い手として支援しています。
もともと私は看護師として、NICUや小児科で精神疾患や染色体異常のお子さんを診ている病院に勤務していました。病院で働くなかで看護師としてある程度の技術面ができるようにもなって、次のステップとして何ができるか、と考えたときに、入院している余命わずかな子どもたちが地域の支援不足で自宅に帰れない姿を目の当たりにし、その無力感を強く感じました。そんな子どもたちが安心して自宅ですごせる環境を創りたいと考え、訪問看護ステーションを立ち上げることにしました。

医療ケア児だけでなく発達に特性のある発達障がいのお子様の育児支援も

2019年9月にサービスを開始して、ありがたいことに双子などの多胎育児の方々に関してはお母さん方の口コミでかなり多くの皆さんに使っていただいています。訪問看護のなかでも小児精神分野は、あまり事業化されているところが少ないのもあり、そういったところで発達に特性のあるお子様の子育て支援や母子サービスと言えば「OHANAさんだよね」とわりと認知度も高くなり、選んでいただくことが増えたように思います。お問い合わせいただくなかでは、発達障害と言われる分野でのご相談も多いですね。病院に行っても病気ではないと治療ができない、と言われたけど、実際にはお子さんの対応でお母さんが困っている、発達障害の問題で生活がうまくいかない。お母さんが疲弊しているといったことがあれば、一度ご相談にいらしていただけたらと思います。医療ケアが必要なご家庭を支援してくれる事業所はあるけれども、そういった医療の狭間の方たちの受け入れ先がない、ということもよく聞くので、そういった方々の支援者の一人になれればとは思っています。

心理学を使った相性診断も活用

私たちの事業所では、利用される方とスタッフのペアリングを決めるときにISD個性心理学という心理学を使った相性診断をしています。コミュニケーションや人との関係性には相性があるので、相性がいいスタッフを配置したり、このタイプの方にはこういう声掛けがいいね、など、看護計画にも活かしています。
また、今の子育て世代にとって電話やメールよりも一番身近なツールであるLINEを使った支援にも力を入れています。公式LINEでは、子育ての悩みの相談はもちろん、緊急訪問が必要な際などの判断材料にも活用しています。電話だとその場のやり取りで終わってしまいますが、LINEなら文章で残るので、また同じような悩みやトラブルが起こったときも、それを見返してもらえば自分で対応できるようになり、育児に対して自信を持ってもらえるとも思います。訪問時以外の時間も、メンタル的なところで支援できればと考えています。

地域のニーズに応える事業を

今後、新事業として「福岡で行われているSOS JAPAN子どもの村という取り組みに参画したい」という展望も持っています。これは、ご家庭で養育できないお子さんを里親制度を使って地域全体で子育てしていこう、という事業です。始まりはオランダで、世界中のさまざまな国で展開されています。日本はまだ福岡だけですが、横浜でも児童相談所がいっぱいで受け入れができないケースが増えていると聞くので、地域のニーズとして立ち上げたいと思っているところもあります。
また、訪問看護ステーションにしては珍しくお子さんのグリーフケアにも力を入れています。若年がんの方でお子さんのことが心配という方も多いのですが、日本というのは他の国と比べて死別に対して心のよりどころが少なく、支援が難しいといった現状があります。小さいときから、人が亡くなることは悪いことではないんだよ、子どものせいではないんだよ、ということを教育として教えていきた。大切な人や親御さんを亡くしても自分らしく生きていいんだよ、ということを伝えたいと思っています。若年がんや難病をお持ちで、子育てに悩みがあるという方もぜひご相談いただきたいです。

子育てにまつわる悩みは専門家に！

子育て中はSNSの情報に惑わされたり、一人で悩んだりすることが多いと思います。ですが、そういったときにはぜひ専門家を頼ってください。私たちの事業所には、看護師から助産婦、保育士、管理栄養士など専門職が在籍しています。子育てに関するお悩みはそれぞれの専門職が寄り添っています。訪問看護は保険診療になるので病名がつかない場合、保険適用外の利用にはなりますが、病名がついてないものであっても家庭内で困っている、悩んでいることがあって、自分たちではうまく対処ができないことがあれば、一度お問い合わせだけでもしていただけたらと思います。

※上記記事は2024年8月に取材したものです。
時間の経過による変化があることをご了承ください。